双天のツバサ|004

2020年7月5日

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 「ツバサ! ツバサ! ごめん、俺強くなるからっ!」

 小学生くらいの子が泣きながら、俺に訴えかけている。なんだかすごく懐かしい気がする。泣くなよ、俺はただ……。ふんわりした感情でその続きがわからない。ただ、とても酷く懐かしかった。

 「ツバ……? ツバサ……」

 ハッと気がつくとラックさんの顔が目の前にあった。ビビった俺は、なんだか昨日と様子の違うラックさんに戸惑った。しかもなんか下半身がスースーする。

 「おはよう? ラックさんどうしたんですか……? えっ!? エッ!?」

 スースーすると思ったら、ズボンもパンツも着ていないことに気がついた。しかもラックさんがなぜか俺に跨って床ドンしている。状況がまったく把握できないでいると、ラックさんが顔を赤らめながら迫ってくる。

 「ツバサ……、はぁ……、めちゃくちゃいい匂いがします。俺、我慢できません」

 そう言いながら、顔を耳元に近づけてクンクン匂いを嗅いでくる。イケメンに迫られてるのはとても嬉しい限りだけど、状況が異常過ぎて飲み込めない。

 「ちょっ! ラックさん、待って! 待って!」

 「ココもこんなにして、俺のこと誘ってるんですよね? いいんですよね?」

 俺の朝勃した起立を手で揉みしだいてくる。

 ちっとも良くない! と思いながら肩を掴んで押しのけようとしても全然敵わない。そうこうしてるうちにラックさんの顔がするすると下半身に下がっていく。一気に両脚を捕まれ高く持ち上げられる。

 「あぁ……、ここから凄くエッチな匂いがする」

 俺の菊門にすんすんと鼻をこすり合わせたと思ったら、ピチャピチャと舐められ始めた。

 「ひゃっ! あっ! やめてくれっ」

 久しぶりに後ろを刺激され、ちょっと感じてしまうが、それどころではない。脚を固定され、上半身を起こそうとしても難しく、戸惑うしかない。

 「これからココに俺の突っ込んで気持ちよくしてあげますね。中にいっぱい出して俺の子供孕ませてあげます」

 ヤバイヤバイ! イケメンとやれるのはオッケーだとしても、このままでは妊娠してしまう。この世界だと卵型の俺は気軽にセックスできないんだ。いくらゲイでも子供ができるとしたら好きでもない、よく知りもしない相手なんてもちろんノーだ。ていうか、ラックさん人格変わりすぎ!

 「あっ! やっ、やっめっ」

 問答無用にラックさんの指が侵入してくる。グチグチと慣らされ始めると、時折いいところを擦ってきて何も考えられなくなってくる。

 「指だけでこんなになっちゃうんですね。可愛いな」

 しだいに指を三本に増やして中でばらばらと慣らされていく。気持ちいい……けど! 本気でどうにかしないとと心では本格的に焦る。

 「ラックさん、正気に戻ってください! 俺なんか妊娠させても後悔するだけですよ!」

 絶対、こうなったのは俺のフェロモンのせいなんだが、騎士団員は我慢できると説明されていたので完全に油断していた。ラックさんもそうなんだろうけど。なんとか正気に戻そうと訴えるも効果はないようだ。

 「こんなに俺のことを求める匂いがツバサからするのに後悔なんてしません。ほら、そろそろいいですよね?」

 ラックさんが自身のズボンを下げ、そそり立つモノが先走りで鈴口から溢れて垂れながら現れた。すごく立派だけど、デカすぎない!? 太さも長さも日本人には見慣れない大きさでかなりビビる。

 「ほら、ツバサに入っちゃうよ、俺のチンポ挿れちゃうよ」

 ラックさんが興奮しながらペニスを俺の後口に擦り付けて煽る。

 「あんっ……、やめっ、挿れないで! 挿れないで!」

 いい歳して、思わず泣きながら、首をぶんぶん横に振って叫ぶ。

 すると、寝室のドアがバンっと思いっきり開け放たれた。

 そこに立っていたのはホンダだった。

 「何やってんの? それ同意?」

 びっくりしたが、フェロモンにやられる様子もないホンダに安堵した。

 「そういぢー、たずげてぇー」

 完全に鼻水と涙でぐちゃぐちゃだったが、声を振り絞って助けを求めた。

 「はっ! 邪魔するなっ……ぐぁっ!」

 ラックさんが抗議の声を発するものの、その途中で一瞬で間合いを詰めたホンダに回し蹴りされて吹っ飛んだ。

 「大丈夫か? ウェッ! お前、めちゃくちゃ甘い匂いするぞ」

 ラックさんがいい匂いがするって言ってたことから、たぶんこれがフェロモンだと思うと説明し、ホンダは大丈夫なのかと聞いてみたら、いい匂いだとは思うが、欲情はしないとのこと。勇者だからかな?

 「とりあえず、ズボン履けば?」

 まだ下半身をさらけ出したままだったのに気づき、ボッと一気に赤くなる。風呂でも見られてるはずだし、今更だけど、やっぱりああいう状況だったから恥ずかしくなるのはしょうがないよな?

 とりあえず落ち着いたので、気絶しているラックさんを客室のほうの椅子に縛り付けて、外にいる護衛にホンダ君から説明をしてもらった。今日は一切室内に入室しないようにと、ラックさんから話を聞くことを了承してもらう。

 護衛は真面目堅物のラックさんがフェロモンに負けたことが信じられないようだったが、室内の匂いをちょっとだけ嗅いだら納得したようだった。俺はその間、自室に避難した。

 しばらくすると、ラックさんが目を覚ました。

 「あれ……? 俺は一体……」

 「ラックさーん、正気に戻ってますかー」

 俺は安全のため、遠く離れた自室のドアから顔だけ出して様子を見る。

 「俺が見たときは、お前がツバサに挿入直前だったんだが、覚えているのか?」

 そんな直接的に言わなくても!! しかもいつの間にか名前呼びになってるのはなんでや。

 「えっ……!? あっ! うわぁぁぁぁぁ!!!」

 現状を把握したようで、ラックさんが一気にサーッと青ざめる。

 「カワシマ様!! 本当に、申し訳ございませんでした!」

 どうやらフェロモンに惑わされている間のことも覚えているらしい。そりゃ覚えてなかったら認知できないもんな……。

 話を聞くと、ちょっと早めに起こそうと、部屋に入ったらフェロモンの甘い匂いが充満していて、我慢しようと意識したが、すぐに匂いに負けて襲ってしまったらしい。

 「暴走モードのラックさん、すごい鬼畜だったんですが、プライベートでもああなんですか?」

 じとーっとした目で見つめる。本当に、あのラックさんは凄かった。一人称も二人称も変わってたし、オラオラ系で強引だった……。

 「今までフェロモンにやられたこともなかったですし、行為に及んだ経験もないので実際はわからないですが、発情するとたぶんそうなんだと思います。本当にすみませんでした! 責任取ります!」

 及んだ経験がないって、この容姿・役職で童貞なのか。最初の印象通りめちゃくちゃ真面目なんだなぁと感心したはいいが、責任を取るとはどういうことなのか。

 「襲ってしまった時に見た、カワシマ様の……その……顔や仕草などがとても可愛くて……。生まれてはじめてこんな気持ちになったんです! 襲ってしまった責任も合わせて、私と結婚してください!!」

 ぽかーん。とするしかない。付き合ってくださいなら、まだ辛うじて、辛うじてだがわかる。でもいきなり結婚を申し込まれるとは思わなかった。

 「あ? 結婚だと? お前まだこいつのフェロモンにやられてるんじゃないだろうな?」

 ホンダが不機嫌かつ理解し難い態度で問う。

 「少しカワシマさんのいい匂いはしますが、今は正気です。そして本気です」

 「ラックさんみたいなイケメンに好かれるのはとても嬉しいですが、子供産む決心なんてまだ全然できません。ごめんなさい」

 もともとゲイな自分にとっては、嬉しいのは本当だが、やっぱり子供ができてしまうのは致命的。自分が子供を産む、そして親になるなんてこの世界に来て3日しか立っていない自分では決意もできていないし、いくらイケメンでも結婚となるとほいほいOKはだせないのである。

 「そうですよね……まだこちらの世界にも慣れてませんもんね。申し訳ない。でも、お付き合いからでも良いので考えておいてください!」

 ここまでグイグイくると、はい、考えておきます。と返すしかなかった。真面目で一直線タイプか。大変そうだ。

 とりあえず、今日のところはフェロモン大放出の俺はおとなしく部屋待機となり、座学を自習と復習であたることになった。ホンダは俺のフェロモンが効かないみたいなので、一緒にいたほうが良さそうということで、同じく部屋待機となった。

 「ふぁぁぁ、なんでこんなことに……」

 ラックさんも退席後、昼食が運ばれ、俺とホンダで食事をしながらフェロモンについて話した。

 「ツバサのフェロモンが強力なんじゃね?」

 そういえば俺のスキル「フェロモン(強)」だったのを思い出し、そういうことかと納得する。

 「でも、ホンダ君には効かないじゃん? なんでろう」

 「そりゃ、加護のおかげだろ。ちゃんとスキル説明見たのか?」

 スキル説明見れるって言ってたなそういえば。俺はあの後すっかり忘れて見てなかったのを思い出し、改めて神の加護について確認してみた。

 スキル:神の加護

 自動翻訳(言葉&文字)、状態異常耐性、能力強化

 「状態異常耐性が、無効化ではないのかもしれないけど、ツバサのフェロモンが効かないくらいは有能そうだな。俺もホイホイ卵型のやつに欲情して子供拵える心配しないで済んで安心したわ」

 そもそも男に欲情したくねぇとホンダは独りごちる。

 「それにしても、最初はかなり甘ったるくて気持ち悪いと思ったけど、慣れてくるといい匂いだわ」

 俺の耳元に顔を近づけてスンスンとホンダがいきなり匂いを嗅いできたので、俺は焦る。

 「ほっ……ホンダ君……ヤメてヤメて、擽ったいから」

 顔が赤くなるのを感じながら、こいついきなり距離感詰めてきやがったなと警戒する。

 「聡一……」

 「え?」

 「もう他人行儀すぎるからさ、名前で呼んでよ。俺に助け求めた時は名前で呼んでくれたじゃん?」

 そうだっけ? と思いながら、あの時はもう必死すぎてそこらへん、何を口に出していたのかなんて覚えてない。そういえば、助けてもらっておいてお礼を言ってなくね?

 「聡一! 助けてくれてありがとう! お礼言うの忘れてたわ」

 「お、おう。良いよそんなの」

 恥ずかしがってるのか、耳をちょっと赤くしてパンに食いつく。クールぶってるのかと思ったけど、結構可愛いじゃん。弟でもいたらこんな感じなのかなと思うとちょっと楽しくなった。

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