双天のツバサ|002

2020年4月28日

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 客室まで着くと、案内してくれた騎士さんが軽く自己紹介をしてくれた。

 「王宮の副騎士団長をしているラック=ラジスターと申します。今後この王宮にいらっしゃいます間は基本的に私がお世話と警護をさせていただきます。勇者様、カワシマ様、どうぞよろしくお願いします」

 合わせて、自分が騎士団の仕事で離れる際は、他の直属の部下が対応してくれることを告げ、シャキッと敬礼される。

 高身長で騎士だけにしっかりとした体躯と筋肉を持っていることがガッチリとした鎧の上からでもじゅうぶん見て取れる。

 金髪碧眼で肌も浅黒い超イケメンだ。

 でも見た目とは裏腹にかなり落ち着いていて、チャラけた雰囲気はまったく感じられないという印象だった。

 明日以降は、1週間この世界のことを学ぶために簡単にラックさんから色々座学や、街を見学していくこと。

 その後どうするかなどはまた話し合いになりそうだと聞かされた。

 とりあえず、元の世界に帰る目処がないので、それで構いませんと伝え、とりあえず終わったと思ったら一気に疲れが体を襲った。

 とりあえず休みたいと言うと、客室からすぐの左手とその奥に2枚の扉があり、そこが寝室になっているということ。浴場は客室を出て、左手一番奥のつきあたりにある大きな扉の先だということ。

 今のところは許可がない限りはそこの範囲外には自由には移動できないことを伝えられた。

 「それでは、失礼します。明日は朝7時頃に伺いますので、ごゆっくりしてください」

 副団長が退出後、ホンダくんと話そうかどうか迷っていたら、あちらはそんな気はないらしく、それじゃお休みと言って奥の寝室に入っていってしまった。

 うーん、今後大丈夫かなぁ……。と若干不安になるものの、自分もそこまで話を弾ませる元気はなかったので、大人しく手前の寝室に入る。

 寝室は8畳くらいの広さて思ったよりも狭かったが、普段からこの広さになれている一般庶民の自分としては十分だった。

 一人で寝るには大きなダブルベッドと、サイドチェスト、その上に水差しとコップが置かれ、小さなテーブルと椅子が2脚置いてある簡単な部屋だ。

 ちなみにトイレは客室の反対側の扉で共用だ。

 とりあえず持っていた荷物をテーブルに置き、ジーンズに入れていたスマホを見てみるも案の定圏外。使えないので電源を落としておく。

 すぐに寝ようとも思ったが、まだ時間は20時らしい。

 時計はこっちにもあって時間の概念も同じなんだなーとぼんやり感じながら、風呂でもゆっくり入ってから寝よ……、と決める。

 ベッドの上に置かれていたバスローブとタオルを手に取り、浴場に向かおうとして、ホンダも誘おうかと迷ったが、あの雰囲気だと誘っても無駄になりそうかなと思い、そのまま客室を出る。

 すると、客室の扉の左右に見知らぬ騎士さんが2人いた。やっぱり見張り? 警護? は付くよね……。

 「浴場ですか?」

 はい、と返事をしつつ浴場へ向かうと2人のうちの1人が付いてきて、浴場の扉の前で待機した。

 こんな待遇産まれて初めてなので申し訳がないと感じつつ、踊り場で服を脱ぎ、浴場へ足を踏み入れた。

 身体を洗い終えると、昔の銭湯のように大きな浴槽にゆっくりと浸かる。

 さいわい、こちらの湯加減も日本と同じくらいかちょっとぬるめだったので、じっくりと長風呂できそうだ。

 改めて自分の身体を見てみても、変わったところなどなさそうに見える。

 卵性で子供が産めちゃうよ! なんて言われても全然実感は湧かない。

 自分はゲイなので、男しかいない世界はちょっとテンションが上ってしまうが、子供ができるとなると安易に行為にも及べないよなと真剣に悩んでしまう。

 そんなことを考えていると、浴場の戸がガラっと開、一瞬ビクッとしたが、その姿を見て安堵する。

 ホンダだった。彼も風呂に入りに来たんだろう。

 彼は一瞬こちらに気づいたがそのまま、身体を洗うようで、すっと洗い場に座ったようだ。

 しばらくすると、俺から少し距離をとって湯に浸かった。チラッと見ると、思ったとおりの良い身体つきで、太い上腕二頭筋、しっかりと6つに割れた腹筋、背中もしっかり筋肉がありそうだ。

 「見た目、まったく変わってないんすね。あそこも付いたままなんすね」

 ホンダがいきなりこっちを見て話しかけてくる。

 はじめてホンダから話しかけられたが、内容があんまりなので驚いたが、まぁ気になるところではあるよなと納得する。

 「そうそう、自分でも今のところまったく以前と違和感ないから自覚もてないよなぁ」

 「その外見で、いきなり女のような身体特徴だったとしたら不気味っすけどね」

 確かに。俺の見た目は別に綺麗だったり、可愛かったりするなりじゃない。

 髪型も短髪ツーブロックだし、顔つきもどちらかといえば男らしい部類で、身長も175センチで、筋肉量も多くはないが少なくもない。

 「俺は、女遊びが結構好きなんで、まったくいないとか言われてちょっとショックだ……」

 イケメンだから女達が放っておかないだろうと思ってたが予想通りで、ホンダ自身もそこそこ遊んでいるようだ。

 「へぇ、やっぱりモテるんだね」

 「姉弟も上に女3人いるから、耐性が半端ないのと扱いが慣れているのもあるかも」

 自然に女性がどんなことをすると喜んで貰えるか姉たちのおかげで十分心得てるらしい。

 「俺は、ゲイだからこの世界も悪くないんだけど、子供ができちゃうとなるとちょっとなぁ」

 「えっ…、まじっすか!?」

 世界観的にもあまり隠す必要はないだろうと思い、ホンダに自分のセクシャリティをサラッとカムアウトする。

 予想通り、ビビってさらに少し距離をとった。

 「ははは、大丈夫。ゲイだからって誰にでも手を出すわけじゃないし、そんな警戒しなくても大丈夫だよ。それにこの世界じゃなおさらだろ」

 「それも……そうっすね」

 ホンダは一瞬考えて安堵したようだ。

 部屋に分かれる時までは、あんまりコミュニケーションとれない奴かと思ったが、実際に話してみるとそうではないようなので、あんまり警戒されてギクシャクしてもこれからのことを考えると面倒くさい。

 タイプではあるけど、この世界では他にも男は盛りだくさんだろうし、ノンケ相手に無理に手を出す必要はない。

 「それにしても、ホンダ君は不運だよね。勇者になっちゃって」

 「それを言うなら、偶然にあの場にいて巻き込まれたあなたのほうが不運だろ」

 実際巻きこれたにしろ、なんで自分なんだろうと神様に問うてみたいものの、いまのところ神の意図はまったく分かるわけがない。

 神の守護ってスキルが自分にある以上、「間違って連れてきちゃった。テヘペロッ!」ってわけじゃないだろうし。

 「そういえば、スキルしっかり確認してみたか?」

 「確認……?」

 確認っていうと実際に使用してみたりしたんだろうか。

 本当に必殺技っぽい無限弾とかは室内で試そうとは思えないんだけど。

 「ステータス表示中に、スキル部分に意識を強く向けると詳細が表示されるみたいだ」

 ほうほう、そんな機能もあったんだなと関心すると、さっき部屋でもう一度確認してたら気づいたという。

 「こっちで言語や文字などが認識できたり話せたりするのは、神の守護の効果みたいだ。神の守護は他にも状態異常にかかりにくくなる効果がある」

 「へぇ、俺にも神の守護はあるから同じ効果みたいだな。後で確認してみるよ」

 異世界なのに、言葉も文字も分かることに違和感を感じていたものの、どうやらそんな便利なスキルが神様に与えられていたようだ。

 まぁ、いきなり異世界こさせて文字言語から習得はじめろとか酷も酷すぎるよな。

 ぬるめとはいえ、結構長い間湯船に浸かっていたせいか、ちょっとのぼせ気味になってしまった。

 ホンダと一緒に風呂から上がって、今度こそ「おやすみ」と軽く挨拶をして自分の寝室に戻った。

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